Anyone to Turn to

岡沢亮 contact: boiledend0320[@]gmail.com http://researchmap.jp/ryookazawa

英語圏の〇〇社会学について学ぶために

英語圏の〇〇社会学の重要文献や共有されている問題意識や方法などを把握したいとき、どうすればいいのかを最近考えている。

もちろん、たとえば「スティグマ Stigma」とか「ミックスド・メソッド Mixed Methods」くらいにトピックが定まっていれば、Annual Review of Sociologyで検索して最新のレビュー論文を読み、引用参照論文を続けて読んでいけばいいかもしれない。あるいは、文化社会学のなかでも「批評」に関する研究に興味があるといった場合には、PoeticsCultural SociologyなどのIFの高い学術誌でそれに関する新しい論文を探し、また引用参照論文を読めばいいかもしれない。

しかし、特定トピックに関する知識を得るためというよりは、より広く基礎的な英語圏の〇〇社会学に習熟したいような場合に、どうやって勉強を進めていけばいいのかが難しい。学術誌をひたすら新しいものから読んでいっても効果は薄いだろう。教科書があてになればいいのだが、Handbook of ~~とかSociology of ~~などと題され、著名な出版社から出ているいかにも教科書然とした書籍が、しばしば編著者と各執筆者のクセが強く出た論文集だったりする。

色々と失敗したあげく、最近は次のようなやり方があるかもしれないと考えている。それは、英語圏の大学院の〇〇社会学シラバスを見て、課題文献を愚直に読んでいくというものだ。重要文献が書籍にせよ雑誌論文にせよ網羅的にわかるし、週ごとにトピック別でわかれているのである程度整理して研究動向を把握できる。

例えば文学の社会学で有名なWendy Griswoldのシラバスなど、文化社会学について学ぶ際にかなり参考になりそうに見える。

http://www.sociology.northwestern.edu/documents/faculty-docs/syllabi/SOC420Syllabus-GriswoldFall2016.pdf

自分の専門ど真ん中のトピックならともかく、〇〇社会学くらいの広いくくりで英語圏の研究動向を学ぶのはなかなか面倒なので、色々と試してみるしかないのかなと思う。

 

山岡重行『腐女子の心理学』のamazonレビュー

『社会にとって趣味とは何か』のamazonレビューを見ていて、山岡重行『腐女子の心理学』のamazonレビューも見てみた。

腐女子の心理学 彼女たちはなぜBL(男性同性愛)を好むのか?

腐女子の心理学 彼女たちはなぜBL(男性同性愛)を好むのか?

星5つのレビューが7本あるが、1本は比較的最近のもの、1本は低評価のレビューに対する饒舌な反論と攻撃(2016年12月19日)で、5本が2016年12月25日から28日までに集中している。

その5本の投稿者はみな、それ以外ひとつのレビューも投稿していない。

また「フェミニズム」や「社会学」への攻撃や、「暴く」「[肯定的意味で]恐ろしい」という語彙が、複数のレビューで共通して用いられている。

ちなみに5人の投稿者の名前は「まり」「ゆか」「めい」「ごはん」「心理学生」。星4つだが同時期に「ありさ」のレビューもある。

 

さらに、『社会にとって趣味とは何か』の「M1」によるレビューとこれら5本のレビューも似通っているように見える。

先述したフェミニズム社会学への攻撃、あるいはフロイトの名前の挙げ方などもそうだが、特に「心理学生」によるレビューは「私は心理学を専攻している大学生です。卒論の話をしていて腐女子の話になり、先生が紹介してくれたのがこの本です」から始まり、「M1」によるレビューは「私は社会科学を専攻する大学院生です。サブカル好きなので、そちらの研究をしたいなんて言う話を指導教授にしていたら2冊の本を紹介されました」から始まる。語りの導入形式がほぼ一致している。

 

もちろん、同じような考えの人が、同じような語彙と文体で、同じような内容を、同じような時期に同じウェブサイトに書いたに違いない。

 

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加藤秀一『はじめてのジェンダー論』

加藤秀一先生から『はじめてのジェンダー論』(有斐閣)をご恵投いただきました。ありがとうございます。大変恐縮しております。

はじめてのジェンダー論 (有斐閣ストゥディア)

はじめてのジェンダー論 (有斐閣ストゥディア)

第1章 ジェンダーとの遭遇──私たちは〈分類〉する
第2章 「女」「男」とは誰のことか──性分化とインターセックス
第3章 性別という壁を乗り越える人々──トランスジェンダー
第4章 ジェンダーは性と愛をも枠づける──同性愛と異性愛
第5章 「男なんだから,男らしくすべき」は論理じゃない──性差と性役割
第6章 科学や数学は女には向いていない?──生物学的性差
第7章 ジェンダーの彼方の国はどこにある──メディアと教育
第8章 男が少女マンガを読むのは恥ずかしい?──恋愛と性行動
第9章 〈被害者〉の視点と〈加害者〉の視点──性暴力(1)
第10章 「わいせつ」と「レイプ」は同じ罪なのか──性暴力(2)
第11章 「女性差別は終わった」という残念な妄想──性別職務分離と統計的差別
第12章 ワーク・ライフ・バランスを阻むものは何か──性別役割分業,ホモソーシャル,マタニティ・ハラスメント
第13章 女は子どもを産んで一人前?──母性愛神話・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ・生殖テクノロジー

ジェンダー論については「自分は社会学を学んできたのだから、ある程度詳しいはずだ」と知らず知らずのうちに思い込んでしまうケースが頻発しているように思うので、その轍を踏まないように勉強させていただきます。

岡沢亮「図画のわいせつ性をめぐる裁判の恣意性再考」(in 『現代社会学理論研究』11号)

新しい論文が公刊されました。

  • 岡沢亮, 2017, 「図画のわいせつ性をめぐる裁判の恣意性再考」『現代社会学理論研究』11: 29-41. [査読あり]

日本における図画のわいせつ性をめぐる裁判は、恣意的なものだとして強く批判されてきました。本論文では、その問題意識の重要性を認めながらも、抽象的な水準で批判を終えて満足してしまうのではなく、個々の判決においてどの部分がいかなる意味で恣意的であるのかを具体的に議論することが重要であり、そのためには判決文の理解可能性を支える概念の論理文法を分析することが有益であると主張しました。

『ソシオロゴス』に掲載された論文に続いて、法学などにおける規範的議論に対して、エスノメソドロジーの立場からの社会学的な分析がいかにして貢献しうるのかを示そうとした論文でもあります。(岡沢亮「作品のわいせつ性に関する法的判断と非-法的知識」(in 『ソシオロゴス』40号) - Anyone to Turn to

また、社会における様々な実践の「恣意性」に対して、社会学はどのように向き合っていくべきなのかについても、何らかの示唆を与えうる論考になればと考えています。( 『概念分析の社会学2』加藤秀一論文について - Anyone to Turn to

未熟な部分も多々あると思いますが、お読みいただければ幸いです。

 

 

2016年度業績

■論文

  • 岡沢亮,2016,「作品のわいせつ性に関する法的判断と非-法的知識——メイプルソープ事件判決を事例として」『ソシオロゴス』 (40) : 95-110. [査読あり](査読者: 加島卓・小宮友根)

■書籍(共編著)

■口頭発表

  • 岡沢亮「図画をわいせつである / ないものとして見ることの「恣意性」再考——愛のコリーダ事件を事例として」日本社会学会 第89回大会 2016年10月9日

 

もっと一年に何本も論文でろよと思いますが、勝手に雑誌に掲載されたりするわけではないらしいので、仕方ないですね。自分ではいいと思っている論文がなかなか通らないときは、Peter Bearmanがかつて最も自信を持っていた論文を通すのに十年かかったというエピソード(伝聞)を思い出すと良いかもしれません。

本が出版されたことを友達に連絡したら、小学校~大学までのふだん社会学に関心を持っていない友達もわざわざ買ってくれたりして、非常にありがたいです。医者になる友人たち、将来的には病院の待合室に置いて欲しいですね。

さて、来年度は博論の各章をひとまず書き上げ、同時にそれらを個別論文として3本以上投稿すること、2本以上論文を公刊することを目標にしておきます。引き続き健康に注意しつつ頑張ります。

この人かなり個性的でかっ飛ばしてる社会学者っぽいです。John Levi Martin

 

 

 

北田暁大+解体研『社会にとって趣味とは何か』

北田暁大+解体研『社会にとって趣味とは何か——文化社会学の方法規準』が河出書房新社から公刊されました。

目次

はじめに 社会にとって「趣味」とは何か──テイストをめぐる文化社会学の方法規準(北田暁大


第1部 理論篇 テイストの社会学をめぐって
第1章 テイストはなぜ社会学の問題になるのか──ポピュラーカルチャー研究におけるテイスト概念についてのエッセイ(岡澤康浩)
第2章 社会にとって「テイスト」とは何か──ブルデューの遺産をめぐる一考察(北田暁大


第2部 分析篇① 「読む」──テイストはいかに作用する/しないのか
第3章 読者たちの「ディスタンクシオン」──小説を読むこととそれが趣味であることの差異をめぐって(岡澤康浩・團康晃)
第4章 ライトノベルケータイ小説、古典小説を読む若者たち──ジェンダーとオタク/サブカル自認(岡沢亮)
第5章 マンガ読書経験とジェンダー──二つの調査の分析から(團康晃)


第3部 分析篇② 「アイデンティティ」──界を生きる
第6章 「差別化という悪夢」から目ざめることはできるか?(工藤雅人)
第7章 「おたく」の概念分析──雑誌における「おたく」の使用の初期事例に着目して(團康晃)
第8章 動物たちの楽園と妄想の共同体──オタク文化受容様式とジェンダー北田暁大


Invitation 「趣味の/と文化社会学」のためのブックガイド
あとがき 「ふつうの社会学」のために(北田暁大) 

ブルデューの『ディスタンクシオン』などの議論を批判的に引き継ぎながら、一方で単なる個人的な好みであるように思われるが、他方でときに人々を序列化するものでもあるような、独特で厄介な「趣味 taste」のあり方に迫るべく、主に統計的な手法を用いた社会学研究です。

各章は小説・マンガ・ファッション・アニメ・音楽など特定の領域をそれぞれ扱っているので、ご関心のある章から自由な順番で読んでいただいても良いかもしれません。

ちなみに、ずっと英語圏で社会学を学んできた人が近くにいたので、先ほど表紙と目次を見せたところ、「Poeticsでよくありそう」と言っていました。このように、「ふつうの社会学」というピンとこないだろう宣伝文句には、英語圏の文化社会学雑誌(PoeticsCultural Sociology)では決して珍しくない、「趣味 taste」をテーマとする計量的な研究を日本でも進めていこう、という意味合いが込められています(と私は考えています)*1

なお、私は4章「ライトノベルケータイ小説、古典小説を読む若者たち──ジェンダーとオタク/サブカル自認」とブックガイドの「読者・読書研究」の項目を執筆しました。

同章の内容はタイトル通りなので特に説明することはないのですが、若者たちが属するカテゴリーと、読む小説のジャンルとが、どのように関連しているのかを単純に分析したものです。こちらもついでにご笑覧いただければ幸いです。 

*1:ちなみに私見では、これら英語圏の文化社会学雑誌の掲載論文の中には、音楽批評における語彙の用いられ方をコーディングしたり

The evaluation of popular music in the United States, Germany and the Netherlands: a comparison of the use of high art and popular aesthetic criteria

子供向けの絵本にどんな動物がどんな職業で登場しているかを数えたり

What do animals do all day?: The division of labor, class bodies, and totemic thinking in the popular imagination - ScienceDirect

と、計量的な分析の対象となるデータ自体が非常に個性的なものも多く、興味深いです。

『現代思想』2017年3月号「社会学の未来」にかこつけて

現代思想』2017年3月号「社会学の未来」特集をざっと読んだ。

 

筒井論考と太郎丸論考は非常に勉強になった。

後者は、最近の計量的な社会学における比較的新しいデータ測定法について簡単な紹介がなされている。参考文献はAnnual Reviews of SociologyASRが多かったので、計量専門の人はすでに知っている内容かもしれないが、私は専門でもないし、それらの雑誌については関心が近い論文や人から勧められた論文しかチェックできていないので、こういう風に日本語でまとめて読めるのは大変ありがたい。『社会学評論』の研究動向レビューも海外の新しい雑誌論文を紹介する形にしてほしい。

あと、そこで言及されている、ある「フィールド実験」(アングロサクソン系の名前を名乗った場合とユダヤ系の名前を名乗った場合のどちらかがホテルの予約を拒否されやすいか)をみて思ったことがある。東大の大学院では外国人留学生用のチューター制度があるが、日本人院生は留学生に対して偉そうに振る舞うことが多いらしい(というかチューターに限らずゼミとかでもそうかもしれない)。私も何度かそういう場面や関連する話を見聞きした事がある。留学生が何系なのか、どの国の大学を出ているのか、といった情報によって東大院生側の態度が変わるかどうか、というのは実験してもいいかもしれない。もちろん指摘されているように、倫理的問題はあるだろうが。

 

中村論考は、博論のまとめ+アルファ。博論はすでに読んだことがあるが、こうしてまとめてもらえるのは(人に勧める時にも)便利でありがたい。しかし、最後の『概念分析の社会学1・2』がポスト分析的エスノメソドロジーだという部分は、『概念分析の社会学』を読んでいない人には唐突すぎるし、そこそこ熱心に読んだ人にとっては、あまりにも概略的で短すぎるだろう。ちょっとよくわからない構成だった。

 

北田論考も読んだが、ほとんど関係のない話をすると、行為の(意味の?)事後成立説といえば、以前EMCA関係のゼミに出入りしていた時に、EMCAを何年も習っているらしい人が事後成立説を強固に主張してきたので一応反論したところ、最終的に「まあEMCAは難しいですからね、勉強してない人にEMCAの立場を伝えていくというのが私の課題です」などとまとめられた思い出がある。

 

現代思想 2017年3月号 特集=社会学の未来

現代思想 2017年3月号 特集=社会学の未来