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Anyone to Turn to

岡沢亮 contact: boiledend0320[@]gmail.com http://researchmap.jp/ryookazawa

2016年度業績

自著論文

■論文

  • 岡沢亮,2016,「作品のわいせつ性に関する法的判断と非-法的知識——メイプルソープ事件判決を事例として」『ソシオロゴス』 (40) : 95-110. [査読あり](査読者: 加島卓・小宮友根)

■書籍(共編著)

■口頭発表

  • 岡沢亮「図画をわいせつである / ないものとして見ることの「恣意性」再考——愛のコリーダ事件を事例として」日本社会学会 第89回大会 2016年10月9日

 

もっと一年に何本も論文でろよと思いますが、勝手に雑誌に掲載されたりするわけではないらしいので、仕方ないですね。自分ではいいと思っている論文がなかなか通らないときは、Peter Bearmanがかつて最も自信を持っていた論文を通すのに十年かかったというエピソード(伝聞)を思い出すと良いかもしれません。

本が出版されたことを友達に連絡したら、小学校~大学までのふだん社会学に関心を持っていない友達もわざわざ買ってくれたりして、非常にありがたいです。医者になる友人たち、将来的には病院の待合室に置いて欲しいですね。

さて、来年度は博論の各章をひとまず書き上げ、同時にそれらを個別論文として3本以上投稿すること、2本以上論文を公刊することを目標にしておきます。引き続き健康に注意しつつ頑張ります。

この人かなり個性的でかっ飛ばしてる社会学者っぽいです。John Levi Martin

 

 

 

北田暁大+解体研『社会にとって趣味とは何か』

自著論文

北田暁大+解体研『社会にとって趣味とは何か——文化社会学の方法規準』が河出書房新社から公刊されました。

目次

はじめに 社会にとって「趣味」とは何か──テイストをめぐる文化社会学の方法規準(北田暁大


第1部 理論篇 テイストの社会学をめぐって
第1章 テイストはなぜ社会学の問題になるのか──ポピュラーカルチャー研究におけるテイスト概念についてのエッセイ(岡澤康浩)
第2章 社会にとって「テイスト」とは何か──ブルデューの遺産をめぐる一考察(北田暁大


第2部 分析篇① 「読む」──テイストはいかに作用する/しないのか
第3章 読者たちの「ディスタンクシオン」──小説を読むこととそれが趣味であることの差異をめぐって(岡澤康浩・團康晃)
第4章 ライトノベルケータイ小説、古典小説を読む若者たち──ジェンダーとオタク/サブカル自認(岡沢亮)
第5章 マンガ読書経験とジェンダー──二つの調査の分析から(團康晃)


第3部 分析篇② 「アイデンティティ」──界を生きる
第6章 「差別化という悪夢」から目ざめることはできるか?(工藤雅人)
第7章 「おたく」の概念分析──雑誌における「おたく」の使用の初期事例に着目して(團康晃)
第8章 動物たちの楽園と妄想の共同体──オタク文化受容様式とジェンダー北田暁大


Invitation 「趣味の/と文化社会学」のためのブックガイド
あとがき 「ふつうの社会学」のために(北田暁大) 

ブルデューの『ディスタンクシオン』などの議論を批判的に引き継ぎながら、一方で単なる個人的な好みであるように思われるが、他方でときに人々を序列化するものでもあるような、独特で厄介な「趣味 taste」のあり方に迫るべく、主に統計的な手法を用いた社会学研究です。

各章は小説・マンガ・ファッション・アニメ・音楽など特定の領域をそれぞれ扱っているので、ご関心のある章から自由な順番で読んでいただいても良いかもしれません。

ちなみに、ずっと英語圏で社会学を学んできた人が近くにいたので、先ほど表紙と目次を見せたところ、「Poeticsでよくありそう」と言っていました。このように、「ふつうの社会学」というピンとこないだろう宣伝文句には、英語圏の文化社会学雑誌(PoeticsCultural Sociology)では決して珍しくない、「趣味 taste」をテーマとする計量的な研究を日本でも進めていこう、という意味合いが込められています(と私は考えています)*1

なお、私は4章「ライトノベルケータイ小説、古典小説を読む若者たち──ジェンダーとオタク/サブカル自認」とブックガイドの「読者・読書研究」の項目を執筆しました。

同章の内容はタイトル通りなので特に説明することはないのですが、若者たちが属するカテゴリーと、読む小説のジャンルとが、どのように関連しているのかを単純に分析したものです。こちらもついでにご笑覧いただければ幸いです。 

*1:ちなみに私見では、これら英語圏の文化社会学雑誌の掲載論文の中には、音楽批評における語彙の用いられ方をコーディングしたり

The evaluation of popular music in the United States, Germany and the Netherlands: a comparison of the use of high art and popular aesthetic criteria

子供向けの絵本にどんな動物がどんな職業で登場しているかを数えたり

What do animals do all day?: The division of labor, class bodies, and totemic thinking in the popular imagination - ScienceDirect

と、計量的な分析の対象となるデータ自体が非常に個性的なものも多く、興味深いです。

『現代思想』2017年3月号「社会学の未来」にかこつけて

現代思想』2017年3月号「社会学の未来」特集をざっと読んだ。

 

筒井論考と太郎丸論考は非常に勉強になった。

後者は、最近の計量的な社会学における比較的新しいデータ測定法について簡単な紹介がなされている。参考文献はAnnual Reviews of SociologyASRが多かったので、計量専門の人はすでに知っている内容かもしれないが、私は専門でもないし、それらの雑誌については関心が近い論文や人から勧められた論文しかチェックできていないので、こういう風に日本語でまとめて読めるのは大変ありがたい。『社会学評論』の研究動向レビューも海外の新しい雑誌論文を紹介する形にしてほしい。

あと、そこで言及されている、ある「フィールド実験」(アングロサクソン系の名前を名乗った場合とユダヤ系の名前を名乗った場合のどちらかがホテルの予約を拒否されやすいか)をみて思ったことがある。東大の大学院では外国人留学生用のチューター制度があるが、日本人院生は留学生に対して偉そうに振る舞うことが多いらしい(というかチューターに限らずゼミとかでもそうかもしれない)。私も何度かそういう場面や関連する話を見聞きした事がある。留学生が何系なのか、どの国の大学を出ているのか、といった情報によって東大院生側の態度が変わるかどうか、というのは実験してもいいかもしれない。もちろん指摘されているように、倫理的問題はあるだろうが。

 

中村論考は、博論のまとめ+アルファ。博論はすでに読んだことがあるが、こうしてまとめてもらえるのは(人に勧める時にも)便利でありがたい。しかし、最後の『概念分析の社会学1・2』がポスト分析的エスノメソドロジーだという部分は、『概念分析の社会学』を読んでいない人には唐突すぎるし、そこそこ熱心に読んだ人にとっては、あまりにも概略的で短すぎるだろう。ちょっとよくわからない構成だった。

 

北田論考も読んだが、ほとんど関係のない話をすると、行為の(意味の?)事後成立説といえば、以前EMCA関係のゼミに出入りしていた時に、EMCAを何年も習っているらしい人が事後成立説を強固に主張してきたので一応反論したところ、最終的に「まあEMCAは難しいですからね、勉強してない人にEMCAの立場を伝えていくというのが私の課題です」などとまとめられた思い出がある。

 

現代思想 2017年3月号 特集=社会学の未来

現代思想 2017年3月号 特集=社会学の未来

 

 

中学受験塾の思い出

社会の教師は新潟水俣病について教えるときに、新潟県では男性が家庭内で非常に強く、母親が体調不良を訴えても全く相手にされなかったため、公害病であることが発見されなかったというエピソードを披露した。

算数の教師は自分が東大を中退して今の職についていることを述べ、親の期待は裏切るなという人生訓を与えた。

前者の主張が事実なのかわからないし、後者の主張には賛成しないが、少なくともそういった考え方があることを小学生の頃に学べたのは良かったと思う。

ところで、塾を卒業するときに塾の前室長(出世して途中で本部に異動になったかなにか)から、「お前は全く喋らないからこれから苦労すると思うけど、頑張れよ!!」と熱く激励されたのだが、今はどちらかというと、喋ったことによってトラブルが発生する事例の方が多い気がする。

UPLINK Cloud

映画

渋谷にあるアップリンクのオンライン版。

それほどタイトル数は多くないし、ツタヤで借りられる作品もあるが、たまに覗いてみれば良さそう。

www.uplink.co.jp

短編のフランス映画が無料だったのでみてみたら、なかなか良かった。私は映画の感想を自由に言おうとすると、「非常に良かった」「なかなか良かった」「あまり良くなかった」「悪かった」のようにアンケート調査のような文言しか出てこない傾向にある。

vimeo.com

Every Frame a Painting

映画

Youtubeの映画解説動画。Every Frame a Painting

音響やカメラの使い方など徹底的に映画の形式に焦点を当てていて勉強になるし、その裏返しとしてストーリーやテーマについて余計な解釈を語って来ないので非常に快適だ。

www.youtube.com

 

ニコラス・ヴィンディング・レフンの『ドライブ』における画面4象限分割

www.youtube.com

 

マーティン・スコセッシにおける「沈黙」

www.youtube.com

 

デヴィッド・フィンチャーは何をしていないのか?

www.youtube.com

 

『ナイスガイズ!』と『スイスアーミーマン』

映画

今年観た映画では『ナイスガイズ!』と『スイスアーミーマン』が非常によかった。前者は2月18日に日本公開、後者はよく知らないがamazonでDVDなど買えるのでぜひ。

『ナイスガイズ!』は探偵もののバディ・ムービーで、大変に愚かでアホなライアン・ゴズリングが観られるので素晴らしい。『LAヴァイス』を3倍速にして面白くした感じ。

www.youtube.com

『スイスアーミーマン』は自殺を試みていたポール・ダノが、喋れたりジェットスキーになったり体から水や銃弾を出せたりする便利な死体(ダニエル・ラドクリフ)に出会い、よくわからないが歴とした友情が生まれてくるいわばボディ・ムービー。

www.youtube.com

この映画の最終盤はかなり異様なのだが、特に凄まじいところは2つある。

1つは、そもそも設定は圧倒的に荒唐無稽だし、その設定を受け入れたとしてもそれまでの物語の展開はかなり強引であるにもかかわらず、最終的な「救い」だけは紛れもなく完全に本物だということだ。

もう1つは、途中多くのシーンで繰り広げられるポール・ダノと死体との遊びは、観客としては「これは幻想(や何かの象徴)なのではないか?」と思わざるを得ないのだけれど、そのような見方はこの映画では許されないことが、明確に示されることだ(この点で、主人公の妄想やラストシーンが逐一象徴的な意味を持っている『バードマン』と対照的だ)。

この映画を観終わった人の多くは、なぜこんなものを観てこれほどまでに感動しているのか、自分でもしばらくのあいだよくわからないだろうし、その不可解さはとても心地よいものだと思う。