読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Anyone to Turn to

岡沢亮 contact: boiledend0320[@]gmail.com http://researchmap.jp/ryookazawa

Every Frame a Painting

Youtubeの映画解説動画。Every Frame a Painting

音響やカメラの使い方など徹底的に映画の形式に焦点を当てていて勉強になるし、その裏返しとしてストーリーやテーマについて余計な解釈を語って来ないので非常に快適だ。

www.youtube.com

 

ニコラス・ヴィンディング・レフンの『ドライブ』における画面4象限分割

www.youtube.com

 

マーティン・スコセッシにおける「沈黙」

www.youtube.com

 

デヴィッド・フィンチャーは何をしていないのか?

www.youtube.com

 

『ナイスガイズ!』と『スイスアーミーマン』

今年観た映画では『ナイスガイズ!』と『スイスアーミーマン』が非常によかった。前者は2月18日に日本公開、後者はよく知らないがamazonでDVDなど買えるのでぜひ。

『ナイスガイズ!』は探偵もののバディ・ムービーで、大変に愚かでアホなライアン・ゴズリングが観られるので素晴らしい。『LAヴァイス』を3倍速にして面白くした感じ。

www.youtube.com

『スイスアーミーマン』は自殺を試みていたポール・ダノが、喋れたりジェットスキーになったり体から水や銃弾を出せたりする便利な死体(ダニエル・ラドクリフ)に出会い、よくわからないが歴とした友情が生まれてくるいわばボディ・ムービー。

www.youtube.com

この映画の最終盤はかなり異様なのだが、特に凄まじいところは2つある。

1つは、そもそも設定は圧倒的に荒唐無稽だし、その設定を受け入れたとしてもそれまでの物語の展開はかなり強引であるにもかかわらず、最終的な「救い」だけは紛れもなく完全に本物だということだ。

もう1つは、途中多くのシーンで繰り広げられるポール・ダノと死体との遊びは、観客としては「これは幻想(や何かの象徴)なのではないか?」と思わざるを得ないのだけれど、そのような見方はこの映画では許されないことが、明確に示されることだ(この点で、主人公の妄想やラストシーンが逐一象徴的な意味を持っている『バードマン』と対照的だ)。

この映画を観終わった人の多くは、なぜこんなものを観てこれほどまでに感動しているのか、自分でもしばらくのあいだよくわからないだろうし、その不可解さはとても心地よいものだと思う。

『モダン・ファミリー』を観て英語を学ぶ

3家族を題材としたアメリカのコメディドラマ『モダン・ファミリー』のシーズン8を観ている。

モダン・ファミリー - Wikipedia

https://www.amazon.com/Modern-Family-Season-8/dp/B01LFSKGUO

直近でみた回では、ジェイが窃盗被害を避けるために1週間前から手配していた監視カメラが届いた日に、隣に黒人の一家が引っ越してきて、自分が差別主義者だと誤解されないかと焦る話などがあった(これも一回のエピソードを構成する小さなパーツのひとつだが)*1結局もとからそんな誤解はされていなかったが、自己紹介しあう際にジェイが新たな隣人の"By the way, I'm Shawn"を"Shawn Mbenza"みたいに「アフリカ的」なフルネームと聞き間違えるところで終わる。

英語の勉強という観点から言うと、話すのが速すぎるという問題とウィットに富みすぎているという問題がある。

前者については、南米からの移民で訛りのあるグロリア以外の登場人物ほぼ全員がジェシー・アイゼンバーグ並みの速さでまくしたててくるので、英検二級という高度なリスニング能力を持つ私でも到底に聞き取れない。この問題の解決策としては、英語字幕をつけるという方法がある。結果として英語字幕にかぶりつくことになるので、画面の印象がほとんどない回などが出てくる。

後者については、個々のストーリーだけでなく、ひとつひとつのセリフに込められた含意を理解するのが非常に難しい。たとえばSnow Ballと題されたエピソードのなかでは、高校のパーティで、ある学生が「ゲイみたいだと馬鹿にされた」と言っていて、視聴者はそういう仕方でバカにするような奴に関していろいろ想定するわけだが、実際にはオスカー・ワイルドみたいなゲイの学生が他の学生の格好を「ゲイのふりしてるのか」とからかい、からかわれた側は何も言えないという展開が待っていたりする。まずこの流れを理解するのにかなり時間がかかるうえ、セリフに関してはリアルタイムでは字幕を見てもほぼわからない。この問題にはいまのところ特に解決策がない。

このように英語の勉強になるかは心許ないが、というか英語の勉強をしてから観た方がいい気もするが、英語の勉強をしていると信じ込むのは難しくないし、あまり聞き取れなくてもとりあえず面白いのでお勧めです。

 

*1:ちなみに妻に「そんなことで差別主義者だと思われるの?」と聞かれた際に「年老いた白人のレイシストが典型的にどんな見た目をしてるか知らないからそう楽観的なんだ!」みたいなことを答えていた。

Art from Start to Finish

Art from Start to Finish: Jazz, Painting, Writing, and other Improvisations / edited by Howard S. Becker, Robert R. Faulkner, and Barbara Kirshenblatt-Gimblett, 2006, Chicago: University of Chicago Press.

・Table of Contents

Foreword by Stanley Katz

Preface by Howard S. Becker, Robert R. Faulkner, and Barbara Kirshenblatt-Gimblett
 社会科学は、美術館、オーケストラ、文学サークルなどの芸術制度や芸術家のキャリアについて研究してきた。また、芸術家や芸術作品と階層、人種、ジェンダーなどの「変数」との関係を研究してきた。さらに、様々な種類の芸術に対するオーディエンスの反応を研究してきた。しかし、芸術作品それ自体については十分研究されていない。

 本書は2001年にフランスグルノーブルで行われた会議に端を発する。そこで出された問い:ある芸術作品が完成する時はいつなのかを、私たちはいかにして知るのか。この問いから出発し、学者や芸術家を集めて本書を書いた。


Editor's Introduction: Art from Start to Finish by Howard S. Becker, Robert R. Faulkner, and Barbara Kirshenblatt-Gimblett

1. The Work Itself
Howard S. Becker


2. Profiles of the Unfinished: Rodin's Work and the Varieties of Incompleteness
Pierre-Michel Menger


3. "How do I know I am Finnish?" The Computer, the Archive, the Literary Artist, and the Work as Social Object
Michael Joyce


4. Shedding Culture
Robert R. Faulkner


5. What Is What I Do
Scott Deveaux


6. Grasping Shona Musical Works: A Case Study of Mbira Music
Paul Berliner


7. Economic Analysis and Steps toward Completing the Work
Richard E. Caves

 

8. The Fragment Itself
Larry Gross

 

9. Object / Shadows—Notes on a Developing Art Form
Larry Kagan


10. "This is a stone from the endless beach": An Interview with Max Gimblett
Barbara Kirshenblatt-Gimblett


11. Art Works
Michael D. Harris


12. Wallace Stevens's Jar
Bruce Jackson

Art from Start to Finish: Jazz, Painting, Writing, And Other Improvisations

Art from Start to Finish: Jazz, Painting, Writing, And Other Improvisations

  • 作者: Howard S. Becker,Robert R. Faulkner,Barbara Kirshenblatt-Gimblett
  • 出版社/メーカー: Univ of Chicago Pr (Tx)
  • 発売日: 2006/06/15
  • メディア: ハードカバー
  • この商品を含むブログを見る

The sociology of art: Ways of seeingメモ

The Sociology of Art: Ways of seeing /​ edited by David Inglis and John Hughson. Basingstoke, Hampshire ; New York : Palgrave Macmillan, 2005.

・目次

Introduction 'Art' and sociology /​ David Inglis, John Hughson(pp.1-7)

芸術社会学の中心的問いの例

・「芸術」とは何か。何が芸術とされ、誰がそれを決定するのか。

・いかにして芸術と社会が関連しているのか。

・芸術と社会的権力の形式はいかに繋がっているのか。

・異なる種類の社会において、芸術はどのように扱われているのか。

・いかにして芸術作品は作られるのか。「芸術家」とは何か。

・いかにして芸術作品は鑑賞者まで届くのか。

・鑑賞者が芸術作品を理解するやり方はどのようなものか。

・なぜ特定の種類の芸術を好む人とそうでない人がいるのか。人の趣味はその人の何を伝えているのか。

本書は、 グローバリゼーション、反省性reflexivity、ブルデューの影響、多領域の視点との議論などが芸術社会学にとって重要であることを示唆する。

PART I. THEORY PAST, PRESENT AND FUTURE

Thinking 'art' sociologically /​ David Inglis

これまでの芸術社会学は、マクロレベルの芸術と社会的要因の関係に関する議論と、ミクロレベルの特定のアートワールドのダイナミクスの分析を通じて、「芸術」「芸術家」「芸術作品」などの常識的観念に挑戦してきた。しかし本書は、さらに新しいパースペクティブを提示していく。

When does art become art? Assessing Pierre Bourdieu's theory of artistic fields /​ Jeremy F. Lane

ブルデューの芸術社会学に対する批判的検討。芸術界の歴史的な自律性の獲得を論じた『ディスタンクシオン』とそれを補足する『美術愛好』の時期から『芸術の規則』の時期に至って、ブルデューの議論に変化が見られた。芸術作品の「普遍的」価値を認めているように見える部分があり、この美的価値の問題は[芸術社会学]にとって残されてたままである。

The female body in women's artistic practice: developing a feminist sociological approach /​ Alexandra Howson

A 'new' paradigm for a sociology of aesthetics /​ Robert W. Witkin

美的スタイルにおけるパラダイムシフトは、変化する社会条件を反映した、価値の理解・経験の新しい様式に対応している。

Invisible aesthetics and the social work of commodity culture /​ Paul Willis

芸術社会学は、公式な「芸術」を特権的に扱っている点で、芸術史のような他領域と変わらない。「美学」は現代社会の大衆や文化的な商品とはつながらないものとみなされている。芸術社会学は、確立された芸術制度の目に見える「美学」領域から離れ、日常の生活世界における目に見えないinvisible美学の役割を理解するようになるべきだ。

Cultural studies and the sociology of culture /​ Janet Wolff

The sociology of art: between cynicism and reflexivity /​ David Inglis

芸術社会学をやるなら自分の前提を反省しろ、シニカルになるな、などの大雑把な心構えが語られている。

PART II. FROM THEORY TO PRACTICE: CASE STUDIES IN THE SOCIOLOGY OF ART

Framing old age: sociological perspectives on ageing in Victorian painting /​ Mike Hepworth.

The rise and fall of the art (house) movie /​ Andrew Tudor

Opera, modernity and cultural fields /​ Alan Swingewood

'World music' and the globalization of sound /​ David Inglis and Roland Robertson

'High arts' and the market: an uneasy partnership in the transnational world of ballet /​ Helena Wulff

Reconstructing the centre: sociological approaches to the rebuilding of Berlin /​ Janet Stewart

 

The Sociology Of Art: Ways of Seeing

The Sociology Of Art: Ways of Seeing

 

 

 

10年前の「新しい芸術社会学」

およそ10年前に「新しい芸術社会学」に関して論じたもの。

de la Fuente, Eduardo, 2007, "The ‘New Sociology of Art’: Putting Art Back into Social Science Approaches to the Arts," Cultural Sociology, 1(3): 409–425.

・1970年代以降の芸術社会学を特徴づけていたのは、芸術社会学を次のようなものとして見る傾向性だった。すなわち、哲学的なアートの解読とは異なるものであり、芸術の生産と消費の具体的なネットワークの研究を好むものであり、芸術家の世界観と芸術界を懐疑するものである。「新しい芸術社会学」は、これらの前提を再解釈するようになってきている。

[ざっくりまとめると]以下のような傾向が最近は見られる。

・美術史、カルチュラルスタディーズなど他領域との接続が見られる(Inglis and Hughson eds)。

・美的要素が社会生活の中で果たしている具体的な効果に目を向けるようになっている(DeNora, Molotch)。

・芸術作品それ自体に着目し、「作品性」に注目したり、作品をアクターや何らかの「過程」の結果としてとらえることがなされてきている(Becker et al.)。

Becker, Howard, Robert R. Faulkner and Barbara Kirshenblatt-Gimblett eds., 2006,  Art from Start to Finish: Jazz, Painting, and other Improvisations, Chicago and London: University of Chicago Press.

DeNora, Tia, 2003, After Adorno: Rethinking Music Sociology, Cambridge: Cambridge University Press.

Inglis, David and John Hughson eds., 2005, The Sociology of Art: Ways of Seeing, London: Palgrave.

Molotch, Harvey, 2003, Where Stuff Comes From: How Toasters, Toilets, Computers, and Many other Things Come to be as They Are, New York: Routledge.

*論文にはもうちょっと色々書いてあったものの、全体的に全然ワクワクさせない感じが驚異的で、かえってここに記録したいというモチベーションが生じてしまった。鬼越トマホークが我が家に「お前らが3人集まってもワクワクしねぇんだよ」と言っていたのが思い出される。上に挙げたなかではInglis and Hughsonを修士の頃に読んで、目の覚めるような退屈さだった記憶がある。しかしBecker et al.と合わせて、一応もう一度借りてきた。

 

法と言語研究 とEMCA

"Language-and-Law Scholarship: An Interdisciplinary Conversation and a Post-9/11 Example"
Elizabeth Mertz and Jothie Rajah
Annual Revier of Law and Social Science 2014 10:169–83.

http://www.annualreviews.org/doi/abs/10.1146/annurev-lawsocsci-102612-133958

法実践における言語使用に着目した諸研究のレビュー。後半部の9/11テロ以降のなんたらの部分はほぼ読んでいないが、とりあえずThe many faces of language-and-law studiesという節は非常にわかりやすく、かつありがたいことに自分の描いていた研究地図とそれほど異なっていなかった。

コンリーとオバールによる法と言語研究に関する教科書的著作であるJust Wordsに触れた後に、法廷の相互行為に関するCA研究にかなり紙幅が割かれ、好意的に言及されていて興味深かった。 法と言語研究は、1.様々な経験的手法を明確に区別せずに、色々混ぜ合わせて使っており(会話分析、社会言語学、ナラティブの分析、意味論、文化人類学パースペクティブなど)、2.法専門家が素人に対してあるいは男性が女性に対して持つ「権力power」や両者の間の不平等に関心がある、という自分がもともと持っていた大雑把な見方で大過なさそうだ。一応このレビューでは、Travers(2006)を参照しながら、CAと「権力」を分析概念とするこれらの研究との折り合いの悪さについても言及している。

 

Understanding Talk in Legal Settings: What Law and Society Studies Can Learn from a Conversation Analyst - Travers - 2006 - Law & Social Inquiry - Wiley Online Library

Traversは、コンリーとオバールのように「権力」や「不平等」を分析概念とし、それらと関連して「ジェンダー」や「階層」などのコンテクストをシンプルに持ち出してくる法と言語研究に対して、シェグロフ参照してレリバンス問題の観点から批判的に検討するわかりやすい構成になっていた。ちなみにMatoesianの著作は、CA側からも、その他の法と言語研究あるいは法人類学研究の側からも評価されているらしい。

 

これらのレビューの見立てに素直に従ってよいなら、本稿の問題関心は〜〜である→実践の参与者にとってのレリバンス問題を十分に考えずに分析を進めるきらいがある法と言語研究は、この問題関心に適合しない→EMCAの立場から法廷での相互行為を分析する、と議論を進めることは割と簡単だろうと思う。

まあそれでもいいが、こういう議論の進め方はEMCA読者にとってはもはや見慣れていて、それほど面白くないのではないかという懸念がある(別に面白くなくてもいいかもしれないが)。これを解決するために、問題関心の重要性についてかなり周到に議論し他領域の先行研究への貢献を明確に打ち出すか、EMCA研究に対しても広い意味で方法論的な貢献を行えるといいと常々思っているが、特に後者については全く道筋が見えてこない。 

 

*追記12/11

Just Words読んでるけど、コンリーとオバールが、ミクロな会話(言語使用)を分析することでマクロな権力や不平等について解明できる、と述べるとき、やはり権力とか不平等といった概念の実践者にとってのレリバンス問題は鑑みられてないように思われる。この見立てが妥当するか読み進めてみよう。

12/12 とりあえず全部さっと読んだ感じ、上の見立ては妥当する。