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北田暁大+解体研『社会にとって趣味とは何か』

北田暁大+解体研『社会にとって趣味とは何か——文化社会学の方法規準』が河出書房新社から公刊されました。

目次

はじめに 社会にとって「趣味」とは何か──テイストをめぐる文化社会学の方法規準(北田暁大


第1部 理論篇 テイストの社会学をめぐって
第1章 テイストはなぜ社会学の問題になるのか──ポピュラーカルチャー研究におけるテイスト概念についてのエッセイ(岡澤康浩)
第2章 社会にとって「テイスト」とは何か──ブルデューの遺産をめぐる一考察(北田暁大


第2部 分析篇① 「読む」──テイストはいかに作用する/しないのか
第3章 読者たちの「ディスタンクシオン」──小説を読むこととそれが趣味であることの差異をめぐって(岡澤康浩・團康晃)
第4章 ライトノベルケータイ小説、古典小説を読む若者たち──ジェンダーとオタク/サブカル自認(岡沢亮)
第5章 マンガ読書経験とジェンダー──二つの調査の分析から(團康晃)


第3部 分析篇② 「アイデンティティ」──界を生きる
第6章 「差別化という悪夢」から目ざめることはできるか?(工藤雅人)
第7章 「おたく」の概念分析──雑誌における「おたく」の使用の初期事例に着目して(團康晃)
第8章 動物たちの楽園と妄想の共同体──オタク文化受容様式とジェンダー北田暁大


Invitation 「趣味の/と文化社会学」のためのブックガイド
あとがき 「ふつうの社会学」のために(北田暁大) 

ブルデューの『ディスタンクシオン』などの議論を批判的に引き継ぎながら、一方で単なる個人的な好みであるように思われるが、他方でときに人々を序列化するものでもあるような、独特で厄介な「趣味 taste」のあり方に迫るべく、主に統計的な手法を用いた社会学研究です。

各章は小説・マンガ・ファッション・アニメ・音楽など特定の領域をそれぞれ扱っているので、ご関心のある章から自由な順番で読んでいただいても良いかもしれません。

ちなみに、ずっと英語圏で社会学を学んできた人が近くにいたので、先ほど表紙と目次を見せたところ、「Poeticsでよくありそう」と言っていました。このように、「ふつうの社会学」というピンとこないだろう宣伝文句には、英語圏の文化社会学雑誌(PoeticsCultural Sociology)では決して珍しくない、「趣味 taste」をテーマとする計量的な研究を日本でも進めていこう、という意味合いが込められています(と私は考えています)*1

なお、私は4章「ライトノベルケータイ小説、古典小説を読む若者たち──ジェンダーとオタク/サブカル自認」とブックガイドの「読者・読書研究」の項目を執筆しました。

同章の内容はタイトル通りなので特に説明することはないのですが、若者たちが属するカテゴリーと、読む小説のジャンルとが、どのように関連しているのかを単純に分析したものです。こちらもついでにご笑覧いただければ幸いです。 

*1:ちなみに私見では、これら英語圏の文化社会学雑誌の掲載論文の中には、音楽批評における語彙の用いられ方をコーディングしたり

The evaluation of popular music in the United States, Germany and the Netherlands: a comparison of the use of high art and popular aesthetic criteria

子供向けの絵本にどんな動物がどんな職業で登場しているかを数えたり

What do animals do all day?: The division of labor, class bodies, and totemic thinking in the popular imagination - ScienceDirect

と、計量的な分析の対象となるデータ自体が非常に個性的なものも多く、興味深いです。

『現代思想』2017年3月号「社会学の未来」にかこつけて

現代思想』2017年3月号「社会学の未来」特集をざっと読んだ。

 

筒井論考と太郎丸論考は非常に勉強になった。

後者は、最近の計量的な社会学における比較的新しいデータ測定法について簡単な紹介がなされている。参考文献はAnnual Reviews of SociologyASRが多かったので、計量専門の人はすでに知っている内容かもしれないが、私は専門でもないし、それらの雑誌については関心が近い論文や人から勧められた論文しかチェックできていないので、こういう風に日本語でまとめて読めるのは大変ありがたい。『社会学評論』の研究動向レビューも海外の新しい雑誌論文を紹介する形にしてほしい。

あと、そこで言及されている、ある「フィールド実験」(アングロサクソン系の名前を名乗った場合とユダヤ系の名前を名乗った場合のどちらかがホテルの予約を拒否されやすいか)をみて思ったことがある。東大の大学院では外国人留学生用のチューター制度があるが、日本人院生は留学生に対して偉そうに振る舞うことが多いらしい(というかチューターに限らずゼミとかでもそうかもしれない)。私も何度かそういう場面や関連する話を見聞きした事がある。留学生が何系なのか、どの国の大学を出ているのか、といった情報によって東大院生側の態度が変わるかどうか、というのは実験してもいいかもしれない。もちろん指摘されているように、倫理的問題はあるだろうが。

 

中村論考は、博論のまとめ+アルファ。博論はすでに読んだことがあるが、こうしてまとめてもらえるのは(人に勧める時にも)便利でありがたい。しかし、最後の『概念分析の社会学1・2』がポスト分析的エスノメソドロジーだという部分は、『概念分析の社会学』を読んでいない人には唐突すぎるし、そこそこ熱心に読んだ人にとっては、あまりにも概略的で短すぎるだろう。ちょっとよくわからない構成だった。

 

北田論考も読んだが、ほとんど関係のない話をすると、行為の(意味の?)事後成立説といえば、以前EMCA関係のゼミに出入りしていた時に、EMCAを何年も習っているらしい人が事後成立説を強固に主張してきたので一応反論したところ、最終的に「まあEMCAは難しいですからね、勉強してない人にEMCAの立場を伝えていくというのが私の課題です」などとまとめられた思い出がある。

 

現代思想 2017年3月号 特集=社会学の未来

現代思想 2017年3月号 特集=社会学の未来

 

 

中学受験塾の思い出

社会の教師は新潟水俣病について教えるときに、新潟県では男性が家庭内で非常に強く、母親が体調不良を訴えても全く相手にされなかったため、公害病であることが発見されなかったというエピソードを披露した。

算数の教師は自分が東大を中退して今の職についていることを述べ、親の期待は裏切るなという人生訓を与えた。

前者の主張が事実なのかわからないし、後者の主張には賛成しないが、少なくともそういった考え方があることを小学生の頃に学べたのは良かったと思う。

ところで、塾を卒業するときに塾の前室長(出世して途中で本部に異動になったかなにか)から、「お前は全く喋らないからこれから苦労すると思うけど、頑張れよ!!」と熱く激励されたのだが、今はどちらかというと、喋ったことによってトラブルが発生する事例の方が多い気がする。

UPLINK Cloud

渋谷にあるアップリンクのオンライン版。

それほどタイトル数は多くないし、ツタヤで借りられる作品もあるが、たまに覗いてみれば良さそう。

www.uplink.co.jp

短編のフランス映画が無料だったのでみてみたら、なかなか良かった。私は映画の感想を自由に言おうとすると、「非常に良かった」「なかなか良かった」「あまり良くなかった」「悪かった」のようにアンケート調査のような文言しか出てこない傾向にある。

vimeo.com

Every Frame a Painting

Youtubeの映画解説動画。Every Frame a Painting

音響やカメラの使い方など徹底的に映画の形式に焦点を当てていて勉強になるし、その裏返しとしてストーリーやテーマについて余計な解釈を語って来ないので非常に快適だ。

www.youtube.com

 

ニコラス・ヴィンディング・レフンの『ドライブ』における画面4象限分割

www.youtube.com

 

マーティン・スコセッシにおける「沈黙」

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デヴィッド・フィンチャーは何をしていないのか?

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『ナイスガイズ!』と『スイスアーミーマン』

今年観た映画では『ナイスガイズ!』と『スイスアーミーマン』が非常によかった。前者は2月18日に日本公開、後者はよく知らないがamazonでDVDなど買えるのでぜひ。

『ナイスガイズ!』は探偵もののバディ・ムービーで、大変に愚かでアホなライアン・ゴズリングが観られるので素晴らしい。『LAヴァイス』を3倍速にして面白くした感じ。

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『スイスアーミーマン』は自殺を試みていたポール・ダノが、喋れたりジェットスキーになったり体から水や銃弾を出せたりする便利な死体(ダニエル・ラドクリフ)に出会い、よくわからないが歴とした友情が生まれてくるいわばボディ・ムービー。

www.youtube.com

この映画の最終盤はかなり異様なのだが、特に凄まじいところは2つある。

1つは、そもそも設定は圧倒的に荒唐無稽だし、その設定を受け入れたとしてもそれまでの物語の展開はかなり強引であるにもかかわらず、最終的な「救い」だけは紛れもなく完全に本物だということだ。

もう1つは、途中多くのシーンで繰り広げられるポール・ダノと死体との遊びは、観客としては「これは幻想(や何かの象徴)なのではないか?」と思わざるを得ないのだけれど、そのような見方はこの映画では許されないことが、明確に示されることだ(この点で、主人公の妄想やラストシーンが逐一象徴的な意味を持っている『バードマン』と対照的だ)。

この映画を観終わった人の多くは、なぜこんなものを観てこれほどまでに感動しているのか、自分でもしばらくのあいだよくわからないだろうし、その不可解さはとても心地よいものだと思う。

『モダン・ファミリー』を観て英語を学ぶ

3家族を題材としたアメリカのコメディドラマ『モダン・ファミリー』のシーズン8を観ている。

モダン・ファミリー - Wikipedia

https://www.amazon.com/Modern-Family-Season-8/dp/B01LFSKGUO

直近でみた回では、ジェイが窃盗被害を避けるために1週間前から手配していた監視カメラが届いた日に、隣に黒人の一家が引っ越してきて、自分が差別主義者だと誤解されないかと焦る話などがあった(これも一回のエピソードを構成する小さなパーツのひとつだが)*1結局もとからそんな誤解はされていなかったが、自己紹介しあう際にジェイが新たな隣人の"By the way, I'm Shawn"を"Shawn Mbenza"みたいに「アフリカ的」なフルネームと聞き間違えるところで終わる。

英語の勉強という観点から言うと、話すのが速すぎるという問題とウィットに富みすぎているという問題がある。

前者については、南米からの移民で訛りのあるグロリア以外の登場人物ほぼ全員がジェシー・アイゼンバーグ並みの速さでまくしたててくるので、英検二級という高度なリスニング能力を持つ私でも到底に聞き取れない。この問題の解決策としては、英語字幕をつけるという方法がある。結果として英語字幕にかぶりつくことになるので、画面の印象がほとんどない回などが出てくる。

後者については、個々のストーリーだけでなく、ひとつひとつのセリフに込められた含意を理解するのが非常に難しい。たとえばSnow Ballと題されたエピソードのなかでは、高校のパーティで、ある学生が「ゲイみたいだと馬鹿にされた」と言っていて、視聴者はそういう仕方でバカにするような奴に関していろいろ想定するわけだが、実際にはオスカー・ワイルドみたいなゲイの学生が他の学生の格好を「ゲイのふりしてるのか」とからかい、からかわれた側は何も言えないという展開が待っていたりする。まずこの流れを理解するのにかなり時間がかかるうえ、セリフに関してはリアルタイムでは字幕を見てもほぼわからない。この問題にはいまのところ特に解決策がない。

このように英語の勉強になるかは心許ないが、というか英語の勉強をしてから観た方がいい気もするが、英語の勉強をしていると信じ込むのは難しくないし、あまり聞き取れなくてもとりあえず面白いのでお勧めです。

 

*1:ちなみに妻に「そんなことで差別主義者だと思われるの?」と聞かれた際に「年老いた白人のレイシストが典型的にどんな見た目をしてるか知らないからそう楽観的なんだ!」みたいなことを答えていた。