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岡沢亮 contact: boiledend0320[@]gmail.com http://researchmap.jp/ryookazawa

閻連科『愉楽』と残雪『暗夜』

最近、閻連科『愉楽』と残雪『暗夜』を読んだ。

前者は、レーニンの遺体を購入して記念館を建設し観光産業を興そうとする県長が、資金調達のために障害者ばかりが暮らす「受活村」から超絶技能を持った者を選抜し雑技団を作り、中国を行脚する。しかし、遺体購入の難航、障害者と「完全人」の対立、受活村の県からの退社の是非をめぐる論争などの問題が起こり不穏な展開を迎える。

ストーリー自体の面白さで勢いよく読み進められるし、それぞれの登場人物が行動を起こす際に依拠する論理には独特の迫力がある。ただ、私としては、少し寓話的に過ぎるようにも思われた。障害者と健常者の関係についての多少風刺的な物語にも読めるし、何よりも文化大革命が中国社会の人々の暮らしにもたらした影響を寓話的に書いていると言えるだろう。あまりにも上手く組み立てられ構造化された寓話という印象が拭えず、私が好みの小説を読んだ時の「なんだこれは」という驚きや困惑、消化しきれない感触がなかった。それは書き手の尋常でない技量を示しているのだとは思うが。

愉楽

愉楽

そこで、後者を改めて再読してみたのだが、物語の展開が不可解であり、個々人の行動原理もつかめないような、読者を困惑させる短編ばかりだ。特に素晴らしいのは、寓話的で教訓やメッセージを引き出せそうな雰囲気をこれでもかとばかりに醸し出しながらも、寓話として読むことは極めて難しいか、そう読むととても単純なものになってしまい全く面白くないところだ。寓話として読むことが拒絶されている感は、しばしば残雪を評する時に持ち出されるカフカとは大きく異なっているように思われる。

暗夜/戦争の悲しみ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-6)

暗夜/戦争の悲しみ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-6)

というかみんな小説を語る時に「カフカ的」とか「マジック・リアリズム」とか言いすぎなのではないかと7年くらい思っている。