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Tröndle et al.(2014)感想 修論でこういう実験をやってもよかった

Tröndle, Martin,Volker Kirchberg and Wolfgang Tschacher, 2014, "Is This Art? An Experimental Study on Visitors’ Judgement of Contemporary Art," Cultural Sociology, 8(3): 310-32.

http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/1749975513507243?journalCode=cusa

「これは芸術か? 来館者による現代美術への判断に関する実験的研究」という論文。内容をざっと要約するとこんな感じ。

ある対象について、人々はどのように芸術/非芸術の区別を行うのか。社会学者のベッカー、ブルデュールーマン、そしてもちろん美学者のダントーやディッキーなど、様々な研究者がそれについて論じてきた。しかし、それを経験的に調査しようとする社会学研究はなされてこなかった。

そこで、美術館の来館者に実験的プロジェクトに参加してもらい、一般的なフェイスシート項目から教育、好みの芸術形式、芸術や展示に期待する要素などを尋ねた上で、美術館にあったNedko Solakovの「作品」を芸術とみなしたか非芸術とみなしたかを尋ねる。前者の質問群への回答と芸術/非芸術の区別の回答との関連に焦点を当て、芸術とみなすか非芸術とみなすかという選択にどのような要因が影響を与えていたかを統計的に分析する。

結果として、先行研究が重視してきた要素よりもむしろ、年齢や芸術形式の好みといった要素が芸術/非芸術の区別に影響していた、といった話。

先行研究がどのくらい一般の美術館来館者による区別に関心があったのか(この点は著者たちも留保している)、また先行研究が重視していた要素をこの質問紙調査でうまく計測できているのかどうかなどの疑問はあるが、古い問いに新しいやり方で取り組み、少なくとも古い答えに疑問符をつきつけることができていて素晴らしいと思う。

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自分の修論では、第1に人々がある作品についてどのように芸術/非芸術の区別を行うのか、第2にその区別を行うことで何をしているのか(その区別実践にはどのような意味があるのか)という問題設定のもと、エスノメソドロジーの立場からそうした区別を行なっているテクストの分析をしていた。

しかし、この論文でやっているように、ある作品を見せる実験と質問紙調査によって計量的にやってもよかったと思うし、その方が少なくとも第1の問いにとっては自然だっただろう。それに加えて、同様の実験をさせて人々に感想を話してもらった上で、その感想を量的に処理することなく分析することを行ってもよかった(是永先生の韓国語の広告の研究のように。これは修論の時にも案としてはあった、気がする)。

この論文のように美術館を巻き込んでこうした実験プロジェクトを行うためには、当然かなりの資金獲得が必須だが、小さい規模の実験ならば院生でもできるのではないだろうか。誰かやってみたらいいと思う。