Anyone to Turn to

岡沢亮 contact: boiledend0320[@]gmail.com http://researchmap.jp/ryookazawa

音楽の力

久しぶりにiPodを起動したところ意外にも懐かしい良い曲ばかり入っていた。大学に入りたての頃に赤井と中本と渋谷で行われたライブに行ったことを思い出す。見たところ10代の人々は自分たち以外に全くおらず周りの人々はみな正装で私たちは苦笑いを無理やり増幅させたような笑い方で場違いな状況に対処していた。

赤井はしばしば哲学や社会学の最近読んだ本に依拠しているかのように見せつつも実際には独自の概念と理屈に基づく社会理論をあまり面白いとは言えない冗談の彩りを添えながら語るという人物で——こうして文字にすると全く好感の持てない人物像が浮かび上がってきて驚いているところだ——彼と話すことは時折の苛立ちも含めてあるいはそれゆえに非常に楽しいものだった。彼はときおり社会学者がどうこう言っていて私は彼の話も社会学者の話も聞いていなかったがいつのまにかこうなっていて彼に笑われているかも知れない。

中本は無意味にラップに詳しく——有意味な仕方でラップに詳しいのがどういう場合なのか難しい問題だが——ある曲についてCDが廃盤なのでいつも動画サイトでそれを聴いているという話を私がしたところそのときは「それ知らないな」と言いつつ翌日には「俺持ってたわ」と言って貸してくれるなど趣きがあった。彼は映画もやたらと好きで、老人がより良い睡眠環境を求めて訪れたあげくフランスの長い映画なんかの上映直後(かつ寝起き)に「なにこの映画。つまらねぇ」(この感想自体はそれほど的外れでもないのが腹立たしい)などと割と大きな声で吐き捨てることでおなじみの名画座で偶然会ったこともある。

それで店に入った時にすごく苦手な音楽がかかっていることがありたまらず外に出てしまうことがあるが、そうしたときに音楽の持つ力を感じる。